脂肪過剰 危険 現代人の生活はとても危険です。どのように危険かを紹介します。
脂肪過剰 危険 間違った食生活が原因で急増中の肥満
現代先進国はひとことでいえば、歴史に例のない前代未聞の脂肪過剰社会です。マクガンレポートによる「食事改善目標」をはじめとして、先進各国の食事ガイドはいずれも脂肪摂取を減らすように、それぞれの国民に訴えています。
日本でも厚生労働省が「食生活指針」で5大指針の1つに「脂肪は量と質を考えましょう」という指針を挙げ、脂肪の過剰と脂肪の質(動物性脂肪と植物性脂肪の比率)に注意を促しました。これは、日本も欧米諸国と同じ問題を持つ国になったからです。脂肪総量の増加はこちらで紹介したように多くのガンを増やし、とくに動物性脂肪の増加は動脈硬化を進め、心臓病や脳梗塞を増やすもっとも大きな原因になってしまいました。
しかし、それ以外にも生活習慣病の巣である肥満を進め、糖尿病も増加させたり、高血圧を増やしたり、また場合によってはある種の貧血さえ増やしていると説く有力な説もあります。マクガンレポートの記録には、こんな言葉も記録されています。
「肥満はアメリカの最大の健康問題の1つです。肥満者の増加がわが国の健康財政を圧迫してやせ細らす一方で、減量産業ばかりが一大産業にのし上がって肥え太っています。」成人病の巣といわれ、多くの成人病の背後原因になることで肥満は健康財政を圧迫する要因になるのです。
肥満は単純なカロリーのとり過ぎだけが原因ではないにせよ、カロリーの高い脂肪(脂肪1 g は9 kcalで、でんぶん質、蛋白質の各4 kcalに比べ2倍以上もカロリーが高い)が肥満の原因になることは誰にもわかります。
さらに脂肪の過剰は、日米いずれの食生活の変化でも見たようにでんぶん質の摂取を大きく減らす要因になってしまいました。胃袋の大きさには限界があり、一方を余計にとれば他方のとり方は減らさなければならないから当然そうなります。そして、このようなバランスの変化は食事内容のバランスを崩し、それが体のカロリーの代謝効率を低下させたり、F /E率(カロリーと繊維の比率)を低下させたりして肥満を招くものにもなります。
肥満は病気の問屋となる
マクガンレポートには、ある中年女性の証言が公式に記録されています。彼女は一般市民の一人としてマクガンレポートの肥満問題の審議に出席して証言しました。
肥満者の姿を目に見えるようにわからせてくれる実例なので、そのまま紹介してみましょう。夫人は太りすぎのため、2歳の時に最初に医者にかかりました。以来20余人の肥満専門医を訪ね減量クリニックをめぐり歩きました。そしていままでに375ポンド減量しました。
375ポンドも減量すれば小錦でも体重がなくなりそうな数値です。しかし彼女が小錦以上の巨人だったわけではないのです。増えては減らし、増えては減らしした体重の総減量トータルが375ポンドで、そのため1万5000ドルものお金がかかりました。
彼女は「減量1ポンド当たり40ドルかかりました」と言いました。体重は19歳で165ポンド、22歳の初産時に174ポンドありました。その後、183ポンドまでになりましたが、今は138ポンドになっています。
この間、彼女はさまざまな病気の問屋になってしまいました。17歳で高血圧、34歳で糖尿病と高脂血症(血液中にコレステロールなど脂肪性物質の多すぎる病気。心臓病の前期症状みたいなもの)になり、心臓病の候補生としても確実になってしまったのです。
この他にも痛風やその他の彼女の多くの病歴はマクガンレポートの公式記録に残されてしまいました。要するに彼女は肥満が原因で多くの病気の問屋になったということです。
成人病の巣「肥満」
理想体重から30 % 以上体重の超過した人は糖尿病には男女とも4倍近くかかりやすくなることがわかっています。ある調査では男性で3.83倍、女性で3.72倍糖尿病になりやすいのです。
胆石は男性で2.06倍、女性で2.84倍かかりやすくなり、心臓病、腎臓病の併発は男性で1.49倍、女性で1.77倍かかりやすくなります。また、マクガンレポートでは子宮ガン、腎臓ガンなどは肥満と関連していると指摘されています。日本のガン学会でも幾つかのガンに関して肥満との関連が指摘されています。そして、肥満は心臓病のリスクも高めます。
心臓病の原因は動脈硬化ですが、動脈硬化を進めるリスク・ファクターは血液中のコレステロールの高さの他に高血圧などもあります。そして肥満はコレステロールを高め、高血圧ともストレートに結びついている。肥満者に胆石が多いことは周知のとおりですが、欧米諸国の胆石はコレステロールが固まってできるコレステロール型の胆石、つまり胆石になりやすい肥満者はそのまま体の中のコレステロールが多いことをこれはよく示しています(ただし、最近では日本の胆石もこのタイプが急増している)。
だから肥満と高コレステロール、高血圧、それと心臓病はみな一緒に結びついているということです。肥満→高コレステロールおよび高血圧→心臓病の増加という図式です。
このことは心臓病では世界的にもっとも有名なフラミンガム調査(アメリカ、マサチューセッツ州のフラミンガム町の住民を対象に数十年間続けられた心臓病に関する統計的追跡調査)も示しています。この調査によれば、体重の増加は血中のコレステロールや中性脂肪を増やし、同時に血圧も上げることを示しています。
そして他の調査も全てこのことを裏づけている。オランダ、フィンランド、イタリア、ギリシャなどで共同して動脈硬化と肥満の関係を調べたのが国際心臓病調査です。
これによると、体重10% 減らすとコレステロールは血液1dl当たり11mg下がり、血圧もかなり下がりました。そして逆に体重が増えれば血圧は上がります。北欧諸国で6万3000人の成人を対象にした調査では、体重が10kg 増えるごとに血圧は水銀柱で2~3mm上昇します。
肥満者は、はっきりした病気にならないまでも長生きしないことをこう説明しています。「50歳の男子で身長179cm、体重77kgの理想体重者はあと25年生きられます。しかし、もし体重が60% 増えたとすれば18年しか生きられなくなる」これは肥満者に多い糖尿病、心臓病といった特別な病気にかからなかったとしてもそうなるのだそうです。
肥満者は病気になればなったで早死にします。また病気にならなくても早死にする。日本国の力士がいい例で力士の平均寿命は50代半ばです。
英米の主要保険会社が明らかにした肥満者の危険度
では肥満者は寿命のうえでどれほど不利になるのでしょうか。病気になる場合もならない場合も含めた総合結果としてこんなデータがあります。
英米両国の主要保険会社全部の資料を集めて分析したイギリス王立医学調査会議社会医学部会のデータです。このデータは要点をつぎのように指摘しています。
- どの年齢をとっても肥満者は死亡率が高い
- 30歳以後その危険は20年間にわたりいっそう高くなる。そしてその後はやや頭打ちになる。
- リスクの度合いは肥満の度合いに比例している。
- 高血圧でかつ1族の中に心臓病を持つ者(心臓病の家族因子といわれるものを持つ者)の場合はリスクはさらに高まる。
- 肥満者が心臓病や腎臓病で死ぬ率は50%高い。また糖尿病にもなっている場合はそのリスクはさらに高くなる。
- 50~65歳で保険に加入した場合は大差がある。
いまの2は逆に読むことだってできなくはないのです。つまり死ぬべき肥満者は早い時期にすでに死んでしまっているという読み方です。脂肪の過剰をはじめとする食事の間違いによる肥満がこれほど問題になる中でこのような実験まで紹介されました。
それはスーパー・マーケットで買い集めた食品を餌にして飼うとネズミも肥満になるという実験です。要するにわれわれも同じ状況の中にいるということをこれは示しているわけです。
繊維不足と食生活のバランスの悪さが肥満を招く
肥満と病気の関係は以上のとおりですが、以下2人のすぐれた研究者と治療家の指摘だけを紹介し、肥満を起こす現代的な食生活の欠陥を理解してもらうことにしましょう。アイルランドに生まれた双生児の兄弟で、一方はアイルランドに留まり、一方はアメリカに移住した577組を比較したものです。
アイルランド残留者はアメリカ移住組に比べ、皮下脂肪もうすく体重も少なく、そして前者が1日にとる繊維の量は6.4g で後者は3.6g でした。
しかも1日の摂取カロリーではアメリカ移住者のほうが700kcalも少ないのです。とるカロリーが少なくても、繊維が少ないと肥満になるようだということが、わかります。問題はカロリーに対する繊維の比率ということになります
繊維の比率(これをF/E 率といいます。Eはエネルギー、Fは繊維= ファイバー)が低ければ肥満になるのだというこおtです。確かにアメリカ移住者はF/E 率は0.116、アイルランド残留者は0.168でした。
問題は口から入るカロリーではなく、実際に体に吸収されるカロリーが問題ということです。この点で繊維が多いと余計なカロリーが体に吸収されないから肥満にならないのです。
アメリカ国立栄養研究所の1つの実験では、繊維を与えた場合には口から入ったカロリーの91.6% が体に吸収され、繊維を与えない場合には96.3% と、5%もの差がでました。確かに口から入る量より実際に体に吸収される量が問題に違いありません。
そして体内の毒素など余分なものを体外に排出する繊維は、おばあちゃんのの知恵で「お腹のすす払い」といわれてきたように、余分なカロリーも排出してくれているのです。
体に吸収される量を問題にする現代の食生活の弱点を知るのに役に立ちます。減量問題の専門家であるが通常の減量法のようなダイエット方式は否定しており、正しい栄養のバランスさえとれれば、後は好きなように食べてもそれで減量できるとしているのです。
しかもこの方法で長年ちゃんと実績を上げてきた専門家です。
エネルギーの代謝効率(カロリーの燃焼効率)が最大の問題として代謝効率を高める方法を幾つか採り入れています。そしてその中の、1つが食事のバランスです。
20世紀の初め頃、アメリカ人は現在より沢山のカロリーをとっていたのですが、肥満なんて問題はありませんでした。カロリーが減ったにもかかわらず肥満になるのは、食事のバランスが悪いために体のエネルギー代謝効率が低下していることが大きな原因です。
20世紀初頭の食事は今の食事よりもでんぶん質の比率が高かったのです、そのほうが体のエネルギーの代謝効率は健全で現在のレベルより高くなります、だからカロリーは高くても肥満にならないのです。それ故もっとでんぶん質の高い食事にせよと指摘しています。
そしてそういうバランスの食事なら別にカロリー制限など不要なのです。
前出の夫人のように、多くの肥満者は体重を減らしては増やし、増やしては減らしをくり返しています。これに閲し、「無理なダイエットで減量したってその後でとる食事のバランスが現代の標準的な食事なら、また増えるのは当然。
やり方を変えればバランスだけをちゃんとすることで、ダイエットなどしないでもきちんと体重は維持できるのです。要するに問題は食事の内容的バランスということで、減量と増量をいたずらにくり返しているようなのは現代の食事の内容的なバランスの悪さが最大の原因ということです。
アメリカ的な食事をやめて以来10年間、体重も一定しているし、すこぶる健康だという言葉を思い出すでしょう。アメリカや日本での食事の内容の変化を頭においてこうした経緯を読み取ると、よく納得できそうです。
また、このような変化の中で繊維摂取も少なくなったのです。こうしてどうやら幾つもの理由によって肥満を増やしているということです。
マクガレポートは食事改善目標の中で「もっとでんぶん質も繊維もとれ」という指摘もしています。この指摘は別に肥満退治の観点からいっただけでなく、他の多くの病気を防ぐという全般的観点からいったものです。
でんぶん質や繊維が少な過ぎる現代の食事は、肥満も多くの病気もみな同時にひき起こす食事になっているということになるのです。
そしてこれは、われわれに「万病一因」という東洋医学の言葉を思い出されます。現代ではその一因がマクガンレポートのいう「間違った食事」になっていることになります。
糖尿病の有力な原因も脂肪の過剰
脂肪と砂糖の増加と繊維の減少は食事欧米化の1つの大きな欠陥ですが、これはとくに糖尿病を増やしたと言えるでしょう。このような食生活が肥満を招くことで糖尿病を増やすことはいま書いたことからすぐにわかるのですが、その他に脂肪そのものがインスリンの働きを妨害するからだということもわかっているからでしょう。
穀類、野菜、果物など自然な植物性食品でとるでんぶん質を減らしたことは、われわれの食生活をカロリーの割に基本的栄養素の欠けた食生活にして国民の健康にダメージをえたものです。